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白沢の倉庫ギャラリー

愛知県名古屋市

建物は(2011年時点で)数年後に取り壊す予定のある、名古屋市内に佇む築88年の集会場跡である。解体されるその日まで、少しでも使ってくれるのならということで、改修自由を条件に家具工房の倉庫として借り入れることになった、という話を聞いたところから計画は始まった。  建物は桁行7間の平屋と、その裏手に10畳部屋が増築されている。現地調査の結果、倉庫機能は裏手の10畳分で十分ということになり、建物本体は家具商品の写真撮影・ギャラリー・イベントフロアなどの多機能スペースに改修。人が集い、小さくとも経済が動く場所として、もう一度あかりを入れようということとなった。  と、言っても物置倉庫からの計画スタートである。予算は全くない。まずは仲間内でコツコツと施工することで人工をカバーすることとした。材料は解体現場などの破材胴縁を寄り集め、寸法を合わせることで確保。壁面を一枚の木製スリットレイヤーで覆いつくす意匠とすることで極力材料費を削減。また既存の木部は煤色に染まっていたため、天井と化粧躯体の色はそのままに、壁は漆喰色に塗装統一することで視覚情報を整理している。  前庭へ向かって軒庇が深く伸びる佇まいは水平ラインを強調し、その間の木製建具は縁側、そして多目的スペースを繊細に紡いでいる。ここに最低限の工事による情報整理意匠形態(主に木製スリットレイヤー)を挿入したことが、結果として手を入れる部分と入れない部分、すなわち、新しさの裏に透けて見える古さをもって両者が共存されるという、特徴的な空間を構成することとなった。  お披露目会のあとすぐに若手の鞄作家、フラワーコーディネーター二人のコラボ展が開催され、何年か振りに人々で賑わい明かりの灯る建物となった。その姿を見た地域住民から感激と感謝のお声をいただいたという報告があり、施主共ににんまりしたのは後日談である。となると欲が出るもので、可能であれば予定よりも長い時間、あかりが灯り続けることを願ってやまない。  追記:完成から10年を数える2022年現在も建物は存在しており、ここを利用する人々の営みから発せられる明かりは、今日も街を灯し続けている、との事である。

主要用途  展示室兼用倉庫

敷地面積  868.58 ㎡

延床面積  86.12 ㎡

構造規模  木造/地上1階(改修)

​施工    WacStyle

​大工    自主施工

​竣工    2012年6月

photo:山吹設計工房

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